塗料・塗装

「塗料」と「塗装」の違い

「塗料」とは水性や溶剤系または弱溶剤系で出来ている液体の物になるのですが、メーカーから販売されている「塗料」は商品でありながら、製品ではありません。
塗料単体では全く役には立たず、その塗料を対象物に塗って塗膜が形成されて初めて本来の製品になるということから、塗料は製品でありながらも、実際は「半製品」と呼ばれる由縁があります。
この塗料を塗る作業が加わって、初めて本来の「製品」となり、その製品のことを「塗装」と呼びます。

  • 自動車に塗れば→車両塗装(板金塗装)
  • 家具に塗れば→家具塗装
  • 建物に塗れば→建築塗装(この中に外壁塗装や屋根塗装が含まれます。)

このように、対象物によって塗装の種類は変わります。

「塗装」について考える

塗装とは中々難しいもので、単純に、
「1」 「性能の良い塗料」 ⇒ 「性能の良い塗装」
とはなりません。
「2」 「性能の良い塗料」 ⇒ 「性能の良くない塗装」
ともなりえますし、
「3」 「ある程度の性能の塗料」 ⇒ 「性能が良い塗装」
という場合も当然あります。

塗料の性能は変わっていませんが、出来上がった塗装は異なる性能になっています。
塗料に塗る作業が加わることにより初めて塗装という製品となることから、
「1」の場合では、「良い塗料」を使用し「良い作業」が加わり「良い塗装」となります。
「2」の場合では、「良い塗料」ではありましたが、「不適切な作業」が加わったために、結果的に「性能の良くない塗装」となってしまうということも十分にありえます。
極端な例を挙げますと、10年間剥離しないアクリル塗装もあれば、わずか5年で剥離が起きるシリコン塗装もあるという事になります。

例えば雨が降った後、下地が乾燥していない状態で塗装を行った場合などでは、塗膜の密着不良が起きる恐れが十分に考えられます。
密着不良ということは、後に塗膜剥離が起きるリスクが高くなってしまいます。
表面が汚れている(洗浄不足・清掃不足)ような下地の上から塗装を行った場合なども、同様に塗膜の密着不良が起きやすくなてしまいます。
このような二例だけではありませんが、塗装というものは「塗料」も重要ではありますが、それ以上にその「塗料」を対象物に塗る「作業」ということの方が重要となります。
いくら良いとされる「塗料」を使ったとしても、塗膜剥離が起きてしまい、対象物から剥がれ落ちてしまえば何の役にも経ちません。
塗料は対象物に密着していることにより、塗装として初めて本来の目的を果たせるものになりますので、塗膜剥離をしないことが前提となります。
この塗装が塗膜剥離をするか、しないかは、結局のところ「作業」次第だということがわかるかと思います。

「塗料」に「作業」が加わり、初めて本来の「塗装」というものになるということです。

塗装の役割

塗装の役割には、
  • 「美観」 色彩や模様や光沢を得る事
  • 「機能」 遮熱性・撥水性・低汚染性・弾力性 等
  • 「保護」 対象物の防食や防腐又は、防水 等
このような役割があることになります。外壁の塗膜の役割を考えていきたいと思います。

そもそも外壁に塗装してある塗膜は「美観」が優先でしょうか?
たしかに、それもあるでしょうが、本来の目的は外壁の「保護」が重要な目的となります。
建物外部で使用される塗装の目的は、対象物の劣化を防ぐ「保護」ということが、塗膜にとって最も優先させられる目的になりまして、その目的の中に「美観」や「機能」という役割を付け加えられている場合が一般的です。
建物内部で使用される塗装の目的は、「美観」が最も優先させられまして、次に「機能」最後に「保護」という順番となります。
使用する箇所や用途によって、塗装に対する考え方が違います。

ここでの話は基本的に外部(外壁・屋根)での話になりますので、まず「保護」という役割を重点的に話をしていきたいと思います。
塗装は下地の対象物(モルタルやサイディング、又は、コンクリート 等)の「保護」が役割です。
そしてその対象物(モルタルやサイディング、又は、コンクリート 等)は、その下の構造体(柱や梁 等)の保護という役割を持っています。
このように考えてみますと、建物外部という条件の悪い過酷な環境の中で、建物の重要な構造体(柱や梁 等)を始め、それらを保護している外壁材(モルタルやサイディング、又は、コンクリート 等)などを保護するために、最も最前線で建物を守っている物が塗装というものになります。
一般的に塗装は色合い等の「美観」を重点的に見られがちですが、実際は外部において使用される塗装の役割は、「保護」性能に重点をおいて塗料の選択を行うことが重要になります。

公共物である歩道橋や高速道路を塗替えしている状況をよく見かけますが、あれは見た目が悪い(サビの発生が酷い等)ので塗装をしているのではありません。
むしろ、大きな構造物になればなるほど見た目が悪くなる前に塗装する事のほうが多いようです。
ということは、「美観」的な事で塗装をしている訳ではないということがわかります。
要は「保護」の為に塗装をしているのです。
表面を「保護」するの塗装が劣化し、本来の「保護」する効果が薄れてきている場合に、下地の対象物(鉄やその他)の劣化(腐食)を防ぐため、新たに表面に「保護」する為の塗装を行う。 またその際に「美観」的要素も加え、再度綺麗な状態に戻す。
というような理由で、行われているのが一般的です。

このように建物外壁においても同様に考えることが最も理想的であり、「美観」的に悪くなってきたので塗装を行うという考え方よりも、塗装の「保護」機能回復に重点をおいて考える必要があるのでは無いかと思います。